こんにちは。
漢方薬剤師の原明奈です。
最近私の知り合いでもコロナに感染された方が増えてきており、この機会にコロナへの漢方治療について調べてみることにしました。
また漢方に詳しい知人4名にも聞きました。
前提としてなのですが、日本においてコロナへの漢方治療に一律なものはないということ。
漢方は病名投与ではなく、その方の体質や症状を踏まえて判断します。
またコロナ自体も症状が様々です。
「コロナには〇〇という漢方がいい」というのは分かりやすく広まりやすいのですが、それは危険です。
コロナの症状は緊急性を要するものもあります。
必ず漢方に詳しい医師や薬剤師に意見を求めてくださいね。
あくまでもこちらの記事は参考程度にとどめて頂けますようお願いいたします。
中国におけるコロナの見解
中国ではコロナは「寒湿邪」によるものと捉えているそうです。
コロナウイルスは湿冷(ジメジメしていて寒い)環境を好むため、陽虚体質の高齢者や寒湿の環境に長く住んでいる患者は障害を受けやすく、感染しやすいとのこと。
コロナは口と鼻から直接裏に入り、肺と脾を障害します。
ということで呼吸器系と消化器系の症状がおこり、表ではなくいきなり裏に入ることから症状が急激に悪化することがあります。
方剤としては、清肺排毒湯をメインとして治療にあたっていることが掲載されていました。
参考:http://www.chuui.co.jp/chuui_plus/COVID-19_cure_tou.pdf
日本(とくに東洋医学会)における見解
◆清肺排毒湯
中国では「清肺排毒湯」が使われていることから、それと同じものを輸入して使う一般の方がいらっしゃるそうです。
元々、中国と日本では使う生薬量に大きな違いがあります。
その理由として中国と日本では、生薬を煎じる際の水質や生薬の刻みの大きさが違うためです。中国と同じように使用するのは危険です。
東洋医学会でも注意喚起をしています。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する中国発の新製剤「清肺排毒湯」等の使用に際しては、用量(生薬量が多く日本での通常使用量の数倍以上)、投与期間(3 日ごとに評価が必要で最長 2 週以内)、適応(若年者向けの処方で、高齢者に対する使用には十分な注意が必要)などの注意点があります。これらの処方に対しては、十分な知識と経験を有する専門医の指導を受けながら,安全性に留意しつつ使用することが必要です。生薬による重篤な有害事象を避けるため,安易な使用はくれぐれも慎むように,注意を喚起いたします。
ここからは金沢大学の小川先生の論文を抜粋して載せます。
参考:https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/news/gakkai/covid19_tokubetu2_0421.pdf
清肺排毒湯の歴史は古く漢の時代に作られた処方です。
日本のエキス製剤にはありませんが、エキス製剤を組み合わせて同様なものを作ることができます。
- 麻杏甘石湯+胃苓湯+小柴胡湯加桔梗石膏
ただし完全に同じものではないため、乾燥した咳が多い場合には麦門冬湯を、痰が絡むような湿った咳には竹筎温胆湯を追加するとのこと。
◆軽症型(倦怠感が主体で肺炎症状なし)
この段階であれば自宅療養となるため、個人的には一番漢方薬を役立てたい段階と思っています。
- 胃腸の不調あり:藿香正気散
- 発熱ありで悪寒なし(ほてり感がある)、喉の軽い痛み:銀翹散
- 悪寒(寒気が強く、汗がでない):葛根湯や麻黄湯
どの漢方薬もドラッグストアでの入手が可能です。
それ以外の症状の場合は、小川先生の文献には様々な方剤が掲載されていますが、まずは医療機関の受診をするのが良いと思います。
◆柴葛解肌湯
現在、東洋医学会ではスペイン風邪の時に効果を上げた柴葛解肌湯のデータが集まってきているようです。
この処方はDrが処方する医療用にはなく、コタローさんが漢方薬局向けに作っているもの。
クリニックでは、葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏で代用しているようです。
以上、コロナへの漢方治療でした。
冒頭にも書きましたが、漢方は病名投与ではなくその方の症状に合わせて使うものであること、コロナは症状が様々であり急に悪化することもありますので、あくまでも参考程度にしていただき、ご自身が連絡をとっている医師や医療関係者の指示に従ってくださいね。
コロナに感染された方の話を聞くと、ご自身の症状だけでなく、濃厚接触者となった方への対応や、外出できないため食料の買い出しに困るなど色々と大変なことがあるようです。
感染予防だけでなく、万が一感染した場合にどうなるのか。
しっかり把握しておきたいですね。